COLUMN

4-本気練習のススメ

カウンタックの車庫入れ修行中 撮影/池之平昌信
カウンタックの車庫入れ修行中 撮影/池之平昌信

昔、『JAF Mate』という雑誌に、「ゆけ! 主婦ドライバー」という連載をしていた。

そこに、「車庫入れが苦手で悩んでいるので、コツを教えてください」という相談があった。私は取材がてらコツを教えつつ、「これで何度も練習してみてください」とお願いしたところ、「えっ!」と絶句された。彼女には、車庫入れを練習するという発想が、まったくなかったのだ。

車庫入れがヘタな人がなぜヘタなままかというと、練習をせず、常にぶっつけ本番だからだ。ほとんどの人は、「よし、1時間車庫入れの練習をしてみよう!」とは考えず、苦手なままズルズルと生きている。

でも、誰だって練習すれば、必ず少しは上達するのだ。池江璃花子さんも言ってたでしょ、努力は必ず報われるって!

 私は昨年、ランボルギーニ・カウンタックというクルマを買ったのだが、自宅車庫の左右幅は2.1メートルしかない。そこに全幅2メートルのカウンタックを、縦列駐車の要領でバックから車庫入れするのは、相当な難度だった。

 そこで私は練習をした。いや正確には作戦を練り、対策を立て、どうすればスムーズに車庫入れできるかを深く考え、それを実行した。最初の車庫入れはぶっつけ本番だったので相当難儀したが、対策の甲斐あって、4回目には拍子抜けするほど簡単に入るようになった。

 これは、自宅車庫だからできるピンポイント的な上達方法だが、車庫入れが苦手なら、車庫入れの練習をすべきなのだ。深夜にスーパーの駐車場にでも行って、1時間車庫入れの練習をしてみなさい! きっとものすごくうまくなるから。ギターでFを押さえるのに比べたら、車庫入れは死ぬほど簡単なので、1時間みっちり練習したら、別人のように上達するはずだ。たったの1時間で!

フェラーリ458イタリアでドリフトの練習中 撮影/池之平昌信
フェラーリ458イタリアでドリフトの練習中 撮影/池之平昌信

車庫入れに限らず、初心者が運転がうまくなるためには、練習しかない。運転は身体動作。つまりスポーツだ。前回は音楽の演奏って書いたけど、似たようなもんだ。練習以外に上達の方法はない。

 これを読んでる初心者のあなた、運転の練習してますか? 言っとくけど「運転している時が常に練習だから……」なんてんじゃダメだよ。それは「ついで」だから。ついでの練習でそんなにうまくなるはずがない。はっきりした課題と目的を持って、練習のためだけにクルマに乗りなさい!

 シフトチェンジが下手ならば、わざわざ空いた広い道路へ行って、シフトチェンジの練習をすべきなのだ! たとえば一定速度で走りながら、2速→3速→4速→5速→4速→3速→2速と、なるべく車体にショックが伝わらないように、スムーズにシフトチェンジを繰り返す練習をしてみるといい。腕立て伏せや腹筋のように!

あるいは、前後にクルマがいないことをしっかり確認して、ブレーキを思い切り踏み込む練習をしてみるべきだ。安全運転のために、これほど大切な練習はない。「そんな危険なこと!」なんて言ってたら、ホントに危険な状況で何もできないから。

なーんて偉そうなこと言ってるけど、実は私も若い頃、練習のためだけにクルマに乗ることなんてほとんどなくて、いつも「ついで」で練習していた。だからヒール&トウができるまで、2~3年もかかってしまったのだ……。

ついでの練習じゃ、なかななうまくならないぞ!
ついでの練習じゃ、なかななうまくならないぞ!

あれだって、どこか広いところで集中して練習したら、数時間でできるようになったのかもしれない。

発想を変えて、まずは自宅の車庫で練習するというテもある。クルマを止めたまま、エンジンも止めたまま、ヒール&トウをひたすら練習してみるといい。シャドーボクシングみたいに。それを1時間繰り返せば、あなたの中で何かが変わるだろう。

その上で、どこか安全な広い場所へ出かけ行って、人に迷惑にならないように気を付けながら、みっちり練習するのだ! 広い公園に楽器の練習に行くみたいに! もちろん練習に一番いいのは、サーキットを走ることだ。

ハチロクと真剣バトル中

こういう反復練習を積んで下地を作った上で、サーキットで思い切り走ってみれば、そりゃあもう、運転というものの概念が完璧にひっくり返り、見える景色がまるで違ってくるだろう。

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